Mac安田の自己紹介
彼女を紹介してください
私の先輩である谷口一級建築士に、彼女を紹介してほしいと頼んだ。「やっさん本気か? 結婚を前提とした彼女がほしいんか?」と、いつもになく谷口は真剣な目つきだ。谷口さんはテリー伊藤のようにちょっとロンパリなので、噴出しそうになるのをおさえて「はい」と答えた。「わかった。紹介してやろう。しかしやっさん、彼女を紹介するには3つの条件がある!」とおもむろに言った。(失礼だが谷口さんは一瞬にして3つもの条件を思いつくほど頭は切れないはず。だとしたらすでに用意していたのか? それとも、自分が誰かに言われたことをそのまま活用したのか?)こんなことを想像する余裕は私にはなかった。
私はどんな条件が出てくるのか、固唾を呑んで待った。元々どんぐり目な谷口さんの目はさらに大きくなり、
「ひとつ、一級建築士に合格すること」
「ふたつ、手取り20万円以上になること」
「みっつ、どんな小さくてもいいから自分の家をもつこと」
と一回一回指をピンとたてながら言った。一つめと三つ目は前からそう考えていたので、ぜんぜん難しくなかった。
給料は自分で決めるわけにはいかないし、頼んだからといって上がるわけではないので、とりあえずできることから着手した。一級建築士は25才で一発で合格した。社会人になって初月給の日から、幼少の頃からの夢を実現するために積立型貯金していたので、(貯金しすぎて小遣いがなくなった時は、親に借りたこともある)26才の時には貯金が500万円くらいできて、初めての家を買った。中古の建売住宅だ。値段は忘れもしない1950万円也。小さいけど庭付き一戸建てだ。1階に水廻りと2室、2階に2室。前の道に歩道があることと、隣の家との間に人が通れるくらいの隙間があるのが気に入った。家のなかを歩きまわった。外からも眺めた。でもなんとなく実感がない、というか、変な感じ。26才の独身で庭付き一戸建てを持っている人は周りにはいなかったし、僕は童顔でとても家の主人とう風貌ではなかった。3つの条件のうち、これで2つが揃った。残りひとつの課題は、当時は高度成長期だったので、「まあ、時間の問題だろう」と希望的観測をして谷口さんに「できました!」と報告した。条件がそろったので、私が設計したマンションの前でお見合い写真を撮ってもらった。カメラマンはもう一人の先輩である奥田一級建築士が担当してくれた。こうしてめでたく条件をクリアした私に、谷口さんからではく、他の人からお見合いの話しが来て、結婚することになった。












